<目指せワンランクアップ> お手軽補正をしよう!
 

 Shadeでレンダリングされた画像は非常にきれいです。特に大域照明を用いた場合は、リアルな色や、微妙影のグラデーションが表現されるため、好んで使われている方も多いはずです。

 単純に、レンダリングされた画像だけでももちろんいいのです。いいのですが、多分これだけだと損をしています。試しに補正をしてみませんか?きっと一味違った良さが出てくるはずですよ。また、大域照明を使った作品ならば、リアリティがぐんと増す可能性もあります。
 
まずは構えず、お手軽気分で補正をしてみましょう。
 
●補正って何するの?

 元の画像の良い部分をさらに引き出し、より良い作品にする作業です。メリハリのある色具合にしたり、ぼんやりした輪郭をはっきりさせたり、鮮やかな色合いにしたりします。この作業は一般にShadeでは行わず、ペイントソフトを用います。

 ペイントソフトは有名どころでPhotoshopPaintshopなどがあります。また廉価なものではThe GraphicsPaintGraphicなどがあります。

私はこのうちThe Graphicsというソフトを用いています。実売価格4000円程度なのに、とても使いやすく、必要十分な機能がそろっていてお勧めです。また、(たぶん)中身がまったく同じなのが、ソースネクストより発売されているPaintGraphicというのがあります(定価1980円)。

 フリーソフトでも高機能なものはたくさんあります。例えばPictbearなど。今回用いる補正ではPictbearでも同様に行うことができます。
  
 
  
サンプル
図1 サンプル
●補正する前に絶対に覚えておきたいこと

 Windows標準のペイントソフトと、高機能ペイントソフトの大きな違いのひとつが、レイヤーを扱えるかどうかです。
 
 レイヤーとは、透明なプラスティックシート(OHPシート)のようなものです。

 レイヤー上では何も描いていない部分は透明のままなので、その下に敷いたレイヤーの絵がそのまま表示されます。また、何かの絵が描いてあって、それが重なり合うことで、色も混ざります。これをうまく使っていくことが補正のコツです。
 
 
  
レイヤーとは
図2 レイヤーとは
●メリハリのある絵に

 もっとも効果的で、見た目の印象が変わるのが、コントラスト関係の補正です。Shadeでレンダリングしただけの絵は、どうしてもコントラストが低くなりがちです。そこで、明るいところはより明るく・鮮やかに、暗いところはより暗くすることでメリハリのある絵になります。

 お手軽なのは明るさコントラストの調整機能です。これは大抵のペイントソフトのメニューにあります。

 しかし、ここでは明るさ・コントラスト調整は使いません。代わりに先ほど解説したレイヤーを使います。 レイヤー機能のあるペイントソフトであれば図3のようなレイヤーウインドウが表示されるはずです。確認しておきましょう。

 最初に補正したい画像ファイルを開きます。するとレイヤーウインドウの中に、図3のようにレイヤーが1枚追加されます。このレイヤー上で右クリックをし、(レイヤーの)複製を選択します。これで元の画像と同じ画像が複製されます。

 レイヤーの属性は標準で”普通”になっています。これを図4のようにオーバーレイにします。属性の横の矢印をクリックすれば属性を選択できます。
 
 
 
レイヤーパレット
図3 レイヤーパレット

レイヤー属性
図4 レイヤー属性
●レイヤーの属性による効果

 図5はもとの画像、図6は複製したレイヤーの属性をオーバーレイにして重ねたものです。見るとわかりますが、オーバーレイを重ねたことで、明るい部分と暗い部分が強調されています。オーバーレイにはこういう効果があるのです。

 もしオーバーレイの効果が強すぎると感じた場合は調整しましょう。図7のように、レイヤーの隣に○○%と書かれているはずです。この数字を透明度と呼んでいます、そのレイヤーの影響度みたいなものになります。数字のそばにスライドバーがあるので、これをマウスでいじって適当な値にしましょう。レイヤーの利点として、透明度をいじるとこで、補正具合を自由にコントロールすることができます。

 逆に、まだまだコントラストが足りない、といった場合には、オーバーレイ属性のレイヤーを複製しましょう。先ほどと同様に、レイヤーのところで右クリックして、複製を選ぶだけです。
 オーバーレイを2枚重ねたことで、コントラストが強すぎるようなら、透明度を下げて、調節しましょう。100%と60%みたいにですね。

 また、元の画像が暗い場合、もしくはオーバーレイによって暗くなってしまった場合は、レイヤーの属性をスクリーンにしましょう。これで全体が明るくなります。
 オーバーレイではコントラストが出ない、そんなときは乗算を試してみましょう。コントラストの強い画像になるかもしれません。

 
 
元画像
図5 元画像

オーバーレイ
図6 オーバーレイ

透明度
図7 透明度
●レイヤー属性を使った補正のまとめ

 オーバーレイ:明るいところをより明るく、暗いところをより暗くします。
           コントラストの強調に。

 スクリーン  :全体的に明るくします。

 乗算      :元のレイヤーと複製レイヤーの色を掛け合わせます。全体に
            暗くなる傾向になります。

 ソフトライト  :のっぺり・平坦な色合いになります。全体の色未調整に少々
           加えるのもあり。


 基本的にはオーバーレイを中心とし、それに付け加える形でスクリーンや乗算を加えていくことになると思います。これについては個人の好みもをあるので、いろいろなパターンを試してみましょう。
 
●色のバランスを変えてみましょ

 これは私個人の好みもあるのですが、Shadeで出力される絵は、全体的に青味かかったような無機質な雰囲気になりがちの気がします。そのため、人間の肌や、植物の質感など、有機的なもにたいしては物足りない色具合となります。

 そこで色味調整をします。前の節まででコントラスト関係の補正は終わりました。そうしたら一度、全レイヤーを1つにまとめます。レイヤーウインドウで右クリックし、”画像の結合”を選択します。これでばらばらだったレイヤーが1つにまとまります。

 次にこのレイヤーをまた複製します。この複製したレイヤーに色味調整をします。補正をする場合は、常に元画像を複製し、複製したものに対して調整するようにすると便利です。
 
 
レイヤー統合
図8 レイヤー統合
●色のバランスを変えてみましょ2

 The Graphicsなら画質補正>カラーバランス、PictBearならイメージ>RGBの度合い、を選択することで色味補正用のウインドウが表示されます。

 見たままのとおり、これら赤・青・・緑のスライドバーを動かすことで画像全体の色が変化します。これもいろいろなパターンがあるので、好みの色具合になるバランスを探して見ましょう。思っている以上に大胆に動かしたほうがいい結果が出ることもありますよ。

 一例として。キャラクター物や植物を作る場合、生命感ある雰囲気にしたいので、赤と緑を強め、青を弱めるようにしています(赤24、緑15、青-6)。図9はそのときのパラメータです。また図10は、図6の絵をこのパラメータの色バランスにしたときの画像です。かなり微妙な変化ですが、確かに違った雰囲気になるはずです。
 
 
カラーバランス
図9 カラーバランス

カラー適用後
図10 カラー適用後
●ボケをなくしてシャープな絵に

 Shadeでレンダリングされた絵はどことなくぼんやりしている感じがあります。私などはそのボケ具合による雰囲気が好きなのですが、写真のようなリアリティを求める場合には、これが障害になることもあります。

 そんなときはシャープフィルタを使います。The Graphicsなら画像補正>シャープマスク、Pictbearならフィルタ>シャープ(強)、を選択します。後は適当な値にして実行するだけ。これで輪郭がはっきりしたはずです。
 お手持ちのペイントソフトに”アンシャープマスク”があるならこれを使いましょう。シャープ具合を調整できて便利です。
 シャープフィルタはかけすぎると画像が荒れるので、1〜3位が適量です。

 シャープフィルタを使う前に、やっぱり元となるレイヤーを複製し、複製されたレイヤーに適用するようにしましょう。

シャープ適用
図11シャープ適用
●ぜひ使いたい自動補正

 さて、ここまではフリーソフトでもできる補正でしたが、市販ソフトをもっているのであればぜひ使いたいのが自動補正です。なにせボタンひとつでいい感じに仕上げてくれるのですから。

 とはいえ所詮はプログラムが判断する作業となります。いつも最適に補正してくれるとは限りません。やっぱりレイヤーを複製し、複製したものにたいして自動補正をするようにしましょう。
 補正結果がよければ、透明度100%のままレイヤーを結合すればいいわけですし、くどすぎるようなら透明度を下げて、すこし影響させるようにすれば良いのですから。

 自動補正は大抵の市販ソフトについていますが、特にお勧めしたいのが、The Graphicsに搭載されている”AIフォトハイエンサー”です。これは強力です。アクが強すぎることも間々ありますが、かなり的確に補正してくれます。
 The Graphicsはいいソフトなんですが、どうもユーザーが少ないようなんです。なのでThe Graphics仲間を増やすためにちょっと宣伝してみたり。
 
 

自動補正効果
図12 自動補正効果
●おまけ

 Shade7より搭載されたパストレーシングは非常にきれいな画像を作り出してくれますが、ノイズが出るのが難点でした。そこで当サイトでは、簡易的ではありますが、ノイズ除去フィルタを提供しています。

 詳しい使い方は専用ページを参照してください。
 元の画像とは別名で保存した画像にフィルタをかけます。フィルタをかけた画像をペイントソフトで開き、新規レイヤー(右クリックで選択)を作ります。
 次に元画像もペイントソフトで開き、全選択&コピーします。あとは先ほど新規作成したレイヤーに、コピーした画像を貼り付けます。貼り付けた元画像のレイヤーの属性をオーバーレイにしてみましょう。うまくいけばノイズが減り、コントラスト調整もされた状態で出来上がったり、出来上がらなかったり・・・。
 図13を見るとザラツキなどが減っているのがわかるかと思います。

 場合によってはこれでノイズをきれいに消せるので、物は試し気分で使ってみてください。ノイズ除去プログラムは、実行してファイル名を入力するだけど、簡単操作ですが、ファイル名を上書きしないように気をつけてください。
 
 
ノイズ除去
図13 ノイズ除去
●最後に

 お疲れ様です、これで終了です。非常に単純ではありましたが、私が知りうる限りの補正についてまとめてみました。ちょっとした工夫で作品の見栄えが良くなることがありますし、レンダリング時間の短縮にもつながるかもしれません。

 せっかく3DCGソフトを使っているのだから、1つのソフト内で全部できるといいのですが、レンダリング自体が膨大な時間がかかりますし、色調整のためにレンダリングしなおすのは非効率的です。なので積極的にペイントソフトなど、他のソフトと組み合わせて作品作りをしていくのも一つの選択肢です。

 オーバーレイによってコントラスト強調、スクリーンで明るさ調整、カラーバランスで色味調整、必要に応じてシャープネス、の組み合わせがお手軽なわりに効果もあって面白いです。

 今回の説明じゃあわかりずらい、等ありましたら、掲示板やメールなどでお気軽に尋ねてくださいな。

 
完成図
完成図
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